NPO法人 紫波みらい研究所
各部会の概要と活動記録
紫波・森と家づくりの会

平成16年4月2日(金)10:30〜
虹の保育園の設計者である佐川旭さん(みらい研会員)による
講演会が行われました!

 これから虹の保育園にお勤めをされる保育士さんや用務員さん、児童館の皆さん、約70人を対象に、虹の保育園の設計のことや森林資源の循環について、お話をされました。



■ 風土に根ざした『虹の保育園』が完成

 こだわり その1

 虹の保育園の中心にある中庭。

 一日中自然光を取り込むことによって、子どもたちが一年を通して陽の光の移り変わりを感じることができます。

 



 こだわり その2

 ヒューマンスケールを基本としたトイレ。

 ヒューマンスケールとは、人間の感覚や行動に適合した適切な空間の規模やものの大きさのこと。

 園児の体型に合わせ、機能的な設計になっています。



 こだわり その3

 森のベンチの壁面には、紫波の山並みや蜃気楼、そこに住んでいるフクロウ、そして4つのタイルには紫波の四季を表わす花々が描かれています。



 こだわり その4

 ホール天井のライトには、北斗七星の明かりをデザインしました。

 

 



 こだわり その5

 遊戯室の天井には、町産の樹齢200年の南部アカマツを大梁として使っています。

 

 


■ ワークショップの実施

 講演の前に佐川さんの提案でワークショップを行いました。
 知らない人が3人ずつ集まり、
互いにインタビューを行うことで、お互いを知りあうことと、世代を越えた交流することを目的としたものです。
 このワークショップを1時間行ない、2名の方が発表を行いました。

■ 講演内容のあらまし

●今は着土の時代

 木という文字を使った漢字を考えてみると、立と木と見で親になります。人と主で住まいになります。これからも木と生活が身近なものだったことがわかります。日本人はきれい好きで清らかな住宅を好みます。建築家は風・塵などをどう形にするか絶えず考えています。  

 これまでの日本は生産、流通、消費を中心とした動脈型社会でしたが、2000年以降は廃棄物、リサイクルを中心とした静脈型社会になったと思います。これからは企画、アイデアなどの工夫が必要であり、これからは大きな意味で「環境」抜きにしては考えられません。

 これまでの日本の流れを考えてみると、昭和30年代から40年代は土着の時代だったんですが、その後、土から離れ根が無くなりました。今は、意識的に土に触れ、自然に触れるという着土の時代です。ローカル(地元の、ある場所の)、グローバル(地球規模の)の二つをあわせたグローカル(地球規模で考え、地元で行動しようという考え方)の時代です。


●風土が教えてくれること

 日本の森林率は67%でノルウエーに次いで第2位の森林国です。

 日本では山を越えると文化が違います。昔は山の暮らしというものがあったんですが、今では失われつつあります。建築を志す大学生でも木の字がついている木の名前を漢字で書かせると五つぐらいしか書けません。松・杉までは書けるんですが後は出てこないんです。いまいちど木の恵みを考えてみる必要があると思います。

 日本で1年間に新築される130万戸の住宅に使用される木材の内、20%が国産材で他は外材です。私は、ウッドマイレージ(※1)が小さくなると二酸化炭素の削減につながると考えています。輸送コストの削減にもつながりますね。

 私は、建物の建築で木を利用するときに、南側の木は南側に使い、北側の木は北側に使うことが大事だと考えています。近年、高気密・高暖房の住宅が増えていますが、その多くが湿気対策を行なっていません。日本の建築の場合は、四季のほかに梅雨を入れて五季と考えなければなりません。各地域での気候が教えてくれることが沢山あります。

  人にとって心が和む色温度は、4200ケルビン(※2)です。それは月の色なんですね。だから人は、月を見ると心が落ち着きます。
  木は紫外線を吸収し、赤外線を反射するため暖かい感じがします。針葉樹の無垢材は見た目も優しいし、保温能力も高いのです。上平沢小学校は保温効果を考え、厚さを40ミリメートルにしています。

(※1) ウッドマイレージとは・・・
 木材は、地元で使うことが一番です。遠くの木材を運ぶと、輸送によってCO2が発生します。木材の産地と消費地までの距離、輸送距離と木材の量を乗じたものが、ウッドマイレージです。外国から運んだ木材は、お金のものさしでは安いのですが、CO2のものさしではとても高い買物なのです。

(※2)ケルビンとは・・・
 色温度(熱学力温度)の単位。熱の色は、温度が高いと青くなり、低いと赤くなります。ちなみに、ロウソクの光は約1800〜1900ケルビン。白熱電球は約3200ケルビン。太陽光は約5000ケルビンです。


●資源の循環、技術の循環、人の循環

 生活スタイルについてですが、家を新築してもすぐに台所の食器棚が狭くなって大変だという話をよく聞きます。イタリア料理には何々の食器を、フランス料理には何をと、あるものに自分を合わせてしまい、自分に軸がないために、ものが増えるんですね。
  これからは生活スタイルの見直しが必要だと思います。    

 紫波町では、平成12年に環境新世紀のイベントを開催しました。資源循環を進めようというものです。これを具現化したものが上平沢小学校の校舎です。

 地元の産材を使い、地元の大工さんで建設したわけですが、一般の競争原理からは外れた進め方です。建設では65人の大工さんが携わりました。大工は30代と60代の組み合わせとしました。理由は、若い人はプレカット材しか使ったことがありません。若い職人さんに60代の持っている技術を伝えてもらおうと考えたものです。匠のリレーです。  

  このことは今回のワークショップも同じです。話し合いを通じて学び、伝えていくことにより、厚みを増していっていただければと思います。

 虹の保育園の遊戯室に使った大梁のアカマツは、県内の取引価格は1本20万円ぐらいです。ところが、関西では100万円します。紫波町の取組んでいる循環型社会の構築では環境・循環をキーワードにこういったものを考えていこうとしています。町では仕事をこれまで縦割りだったものから、縦軸に横軸を加えることによって横断的にしようとしています。まちづくりでは「風に聞け、土に着け」も大事です。

 50年、100年先の子どもたちに紫波の良さを伝えていくことを考えた場合、保育に携わる方々は子どもたちの大事な時間に接していることになります。


●最後に

 江戸時代は、循環型社会・リサイクル時代だったと言われています。

 当時はこういう言葉があったそうです。「七味・五悦・三会」です。七味は年に7回は美味しいものを食べましょう。五悦は年に5回 喜びを得ましょう。三会は年に3回はすばらしい人と出会いましょう。というものです。

 この言葉を、ここにお集まりの方へ贈り、この会を終わらせていただきます。

 

 

 

(2004.4.8)

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